政府は悪を罰し善を奨励すべきである その1
ウエイン・グルーデムの著書から、聖書に記されている政府の役割について見ていこうと思います。
引用元:「聖書に基づく政治」 ウエイン・グルーデム(P77~P78)
1.旧約聖書における土台
神が人間社会において最初に設立した政府については、ノアの洪水直後の記述に見ることができる。神は殺人罪に対する代価(賠償)を要求しており、代価は犯罪者以外の人間によって執行されなければならないと述べている。
創世記9:5~6
また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。人の血を流す者は人によって自分の血を流される。人は神にかたどって造られたからだ。(新共同訳)
この箇所には政府に関するこれ以上詳しい記述はされていないが、(殺人罪という)もっとも悲惨な犯罪に対する報復として、(人の命を取るという)厳罰の執行を神は義務づけている。(中略)
この命令はノアに与えられたものだが、21世紀の人類にとっても大きな意義がある。なぜならこの出来事は、アブラハムの子孫であるイスラエル民族の勃興や、出エジプトに伴うイスラエル国家の設立よりも遥か以前のことだからだ。
ノアへの命令は、洪水によって破壊された人類社会の再建に際して与えられた。それゆえこの箇所に見られる聖書的原則は、旧約時代に限定されるべきものではないし、イスラエル国家に限定されるべきものでもない。この箇所の前後の脈絡からして、この命令がそのような限定を受けないことが理解できよう。この箇所に見られる原則は、時代を超えて人類全体に適用できるものなのだ。
●政府は正義を行ない弱者を守らねばならない
悪を罰し善に報いることは、「正義を行なう」ことに他ならない。正義とは、神の律法に基づいた正当な基準によって統治することである。もし王が正義を行うなら、悪を行う者を罰し、正しいことを行う者には加護と報いをもたらすことになる。
神は詩篇の中で、この世の支配者に対して次のように述べている。
いつまでおまえたちは、上正なさばきを行ない、悪者どもの顔を立てるのか。
弱い者とみなしごとのためにさばき、悩む者と乏しい者の権利を認めよ。
この箇所は次のことを強調している。
①支配者は公平さと義によって裁きを行い、えこひいきしてはならない。また、法と事実関係に根差した裁きを行わなければならない。
②支配者は「弱者や孤児」、すなわち自分を守る力のない者を擁護するために特に注意を払わなければならない。
③「悪者ども」が他者、特に「弱い者」や「貧しい者」に害を及ぼすのをやめさせるため、権威を行使しなければならない。
ダニエル書にはネブカデネザル王に対するダニエルの勧告が記されており、王に対する神の御心は、「正しい行ない」をし、「貧しい者をあわれむ」ことだと述べられている(ダニエル4:27)。
つづく
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