イエスさまに会って教えを受けた??? ~聖書の十全性と現代の啓示~ その2
その1では、聖書の十全性に抵触している実例を挙げ、注意を促しました。この記事では、聖書の十全性を簡潔に説明し、聖書が神からの完全な啓示であることを理解します。
●聖書の十全性
第二テモテ3:15~17
聖書はあなたに知恵を与えてキリスト・イエスに対する信仰による救いを受けさせることができるのです。聖書はすべて、神の霊感によるもので、教えと戒めと矯正と義の訓練とのために有益です。それは、神の人が、すべての良い働きのためにふさわしい十分に整えられた者となるためです。
①聖書は、信者に救いを受けさせる啓示
ここでの「聖書」は直接的には旧約を指しています。アブラハムやモーセ、ダビデらが福音の詳細は知らなくても救われていたように、テモテ(信者)にも救いを与える力があると、パウロは述べています。こんにちにおいては、新約聖書も「聖書」の中に含めることができます(第二ペテロ3:16)。
②信者の教義の教育、矯正、義の訓練に有益な啓示
③信者を働き人として備えるのに十分な啓示
17節の「ふさわしい」と訳されているギリシャ語には、「完全な」とか「成長し切った」という意味があります。また「十分に整えられた」のギリシャ語は、「完成させる」「終える」「完全に家具を備える」という意味の動詞です。このようにパウロは、意味が重複した言葉をあえて使っています。それほど聖書が、信者を主の働き人にするために十分な啓示であることを示唆しています。
*十全性の参考サイト1:
http://www.gotquestions.org/Japanese/Japanese-sufficiency-of-Scripture.html
●完全な啓示
聖書は、神が人類に与えた完全な啓示であるため、①付け加えたり、②差し引いたりしてはなりません。付け加えたり差し引くなら、神による裁きを招きます。
黙示録22:18~19
私は、この書の預言のことばを聞くすべての者にあかしする。もし、これにつけ加える者があれば、神はこの書に書いてある災害をその人に加えられる。また、この預言の書のことばを少しでも取り除く者があれば、神は、この書に書いてあるいのちの木と聖なる都から、その人の受ける分を取り除かれる。
参考サイト2:
黙示録は、旧新約聖書の最後の書簡です。その中で神は、付け加えたり、差し引いてはならないと厳命しています。参考サイト2にあるように、この聖書の十全性を侵している顕著な例が、異端として知られる新興宗教です。
宗教とまで行かなくても、新しい教えとしてカテゴライズできるものがカリスマ・ペンテコステ派の中にはいくつもあります。こんにち、聖書の十全性に抵触する情報は溢れています。しかし聖書の十全性に抵触する情報は、神の裁きを招くものであること覚えておかなければなりません。
このブログの記事「ビル・ジョンソンの横顔」で紹介した「ニュー・アポストリック・リフォーメーション」の信条の中に、「聖書以外の啓示・・・信者は、聖書の内容と矛盾しない範囲の補完的啓示を神から受けれることができると信じている」という項目がありました。
これは具体的には、NARに所属する人たちによる預言の言葉など、第一コリント12:8~10の啓示の賜物を通しての語り掛けに加えて、彼らが霊的体験を通して受けた情報などを指しているものと思われます。
聖霊の賜物はこんにちでも働いていますし、霊的体験にも真に神が与えるものがある一方で、誤った情報や、悪霊がもたらしたと思える情報が氾濫しています。
●実例2
このサイトは、シド・ロスの「超自然的なわざ」というアメリカのキリスト教番組です。番組の中では、ジェームズ・マローニーという預言者の霊的体験を、動画で再現しています。いくつかの体験の一つとして、2012年2月の体験談が出てきます。
その夜、マローニー氏はベッドに座り、床につこうとしていました。ところが突然、上空に引き上げられ、車に乗った状態でウズベキスタンのアバウティーという街に移動します。つまり、車ごと空を飛んだということになります。
その街には宣教師の伝道で救われた現地人がたくさん集まっていますが、現地人たちは重い病気にかかっていたり、ひどい怪我を負っています。宣教師は福音は語りましたが、癒やしについては教えなかったのだそうです。
マローニー氏が到着した場所にイエスが現れ、彼はイエスと肉体的に一体化して、3時間にわたり癒やしの奉仕をしたそうです。この一体化については、ローマ8:19に書かれていると述べています。
イエスとの一体化で起きた奇蹟はすさまじく、地雷で足が吹き飛んだ少女の足が、「生えたのではなく、一瞬にして現れた」そうです。
●問題点
この体験の問題点は何でしょうか。
肉体ごと地理的に移動する現象は、使徒の働き8:39~40で伝道者ピリポに起きているので、こんにち同じ現象が起きても問題ではありません(車ごとという点は引っかかりますが)。
問題なのは、預言者が肉体的にイエスと一体化したという点です。彼はローマ8:19を根拠として挙げていますが、その個所は全然そのような意味ではありません。
その個所が言っているのは、イエスの再臨時に起こる私たちクリスチャンの肉体の栄化のことです(ピリピ3:20~21、第一コリント15:51~52)。
聖書は、私たち信者が霊的にイエスと一体化していることを教えていますが(ローマ6:3~8)、肉体的な一体化という現象についてはどこにも記していません。つまり聖書にはない、新しい教義ということになります。
実はこの預言者が主張している一体化現象は、Manifest Sons of God(マニフェスト・サンズ・オブ・ゴッド)という教えで、ひと昔、アメリカで流行ったものです。そして最近もこの教えは、アメリカの福音的な信者の間で再流行しています。
しかしこの教えは、1948年にアメリカ最大のペンテコステ教団であるアッセンブリ-ズ・オブ・ゴッド教団が、異端的な教えとして告発したものなのです。
参考サイト:Bible Theology Ministries
当時は、終末になると一部のエリート・クリスチャンが神格化して、神の子どもになると教えていました。そして神格化した信者のことをマニフェスト・サンズ・オブ・ゴッドと呼んだのです。この教えをマローニー氏は少し修正して教えているのです。
これは聖書の啓示外の内容ですから、教義的に混乱を招くことになります。アメリカでは実際に混乱が生じています。
ローマ8:19が述べている肉体の贖い(栄化)は、救いの最終段階のことです。ですからMSoGなる教えは、救いに関する真理を捻じ曲げて、決して起こりえない不可思議なファンタジーに、信者の思いを向けさせることになるのです。
神は肉体の変化(栄化)という希望をクリスチャンたちに持たせたいと願っているのに、その希望を、ありもしない話とすり替えてしまうのです。
●まとめ
日本の信者の皆さんは、聖書以外の霊的情報については、必ず聖書に照らし合わせる習慣をつけましょう(使徒17:10~11)。アメリカの福音派の二の舞を踏んではいけません。間違った情報を取り込んだり、自分自身がその発信源になってしまわないよう注意しましょう。