【ミニ投稿】焼き尽くされるvs 晒される 2ペテロ3:10
底本の違いで、訳し方が二分されている箇所です。
●訳語の大きな違い
2ペテロ3:10
しかし、主の日は、盗人のようにやって来ます。その日には、天は大きな響きをたてて消えうせ、天の万象は焼けてくずれ去り、地と地のいろいろなわざは焼き尽くされます。
10節は、底本の違いによって訳し方が分かれているようです。
岩波翻訳委員会訳や新共同訳は、10節の終わりが次のように訳されています。
岩波翻訳委員会訳
主の日は盗人のようにして来るであろう。その日、諸天は大きな音をたてて去り行き、天体は火に包まれて崩壊し、地とそこでの業が白日のもとにさらされるであろう。
新共同訳
主の日は盗人のようにやって来ます。その日、天は激しい音をたてながら消えうせ、自然界の諸要素は熱に熔け尽くし、地とそこで造り出されたものは暴かれてしまいます。
●底本の違い
理由は底本の違いです。
新改訳の底本は入手できませんが、以下に最新の底本であるNA28をコピペしました。
NA28
γῆ καὶ τὰ ἐν αὐτῇ ἔργα οὐχ εὑρεθήσεται
地球 と 冠詞 中の その わざ ない 発見される
私の推測ですが、恐らく新改訳は、
NA28と同じように、否定語のouxが入っている底本を使ったのだと思います。
ouxが入っていると、「地球とその中のわざが見出されない」と訳すことになり、
これを意訳して「焼き尽くされる」と訳しているのだと思います。
一方、英語の聖書は、新米標準訳(NASB)を除いて、
軒並みouxが入っていない底本を採用しているようです。
一例としてESV(英語標準訳)をコピペします。
the earth and the works that are done on it will be exposed
地球と、地上でなされたわざは暴露される。
●焼き尽くされるvs晒される
2ペテロ3:11~13
3:11 このように、これらのものはみな、くずれ落ちるものだとすれば、あなたがたは、どれほど聖い生き方をする敬虔な人でなければならないことでしょう。
3:12 そのようにして、神の日の来るのを待ち望み、その日の来るのを早めなければなりません。その日が来れば、そのために、天は燃えてくずれ、天の万象は焼け溶けてしまいます。3:13 しかし、私たちは、神の約束に従って、正義の住む新しい天と新しい地を待ち望んでいます。
ではどちらが正しいのでしょうか?
これは文脈で判断するしかありません。
上記を見ていただくと、ペテロは「聖い生き方」「敬虔な人」「正義」など、
倫理的なテーマを述べています。
これと整合する10節の訳文としては、岩波翻訳委員会訳が最適です。
岩波翻訳委員会訳をつけ加えてみます。
主の日は盗人のようにして来るであろう。その日、諸天は大きな音をたてて去り行き、天体は火に包まれて崩壊し、地とそこでの業が白日のもとにさらされるであろう。
このように、これらのものはみな、くずれ落ちるものだとすれば、あなたがたは、どれほど聖い生き方をする敬虔な人でなければならないことでしょう。
いかがでしょうか。
10節から11節にかけての論理の流れが、しっくりくると思います。
ペテロは、物質的なものは過ぎ去るけれども、
地上で人間が行ったわざはその後も残り、
神の目に晒されることになる、裁きの対象になる、と言っているわけです。
パウロも「主の日」について語った後、倫理的な勧めを述べています。
1テサロニケ5:2~11
主の日が夜中の盗人のように来るということは、あなたがた自身がよく承知しているからです。・・・ですから、ほかの人々のように眠っていないで、目をさまして、慎み深くしていましょう。・・・救いの望みをかぶととしてかぶって、慎み深くしていましょう。・・・主が私たちのために死んでくださったのは、私たちが、目ざめていても、眠っていても、主とともに生きるためです。ですから、あなたがたは、今しているとおり、互いに励まし合い、互いに徳を高め合いなさい。
↓最後までお付き合いくださりがとうございます↓