ダビデの日記

自分が学んだ聖書の教えに関するブログ

聖書ギリシャ語

七十人訳におけるビアゾーの使用法とマタイ11:12

この記事は、前回の続編です。 前回も述べましたように、マタイ11:12で「激しく攻められている」と訳されたギリシャ語ビアゾーは、中動態と取ることも可能ですし、受動態と取ることも可能です。 どちらに取るかで、聖句の意味が変わります。 ビアゾーについ…

天の御国が「激しく攻められている」? マタイ11:12

マタイ11:12は、翻訳や解釈が難しい箇所の一つだと思います。 その理由の一つは、「激しく攻められている」と訳されているビアゾーという動詞が、中動態にも受動態にも取れるためです。 主な邦語訳は、どれも受動態として訳しています。 ●マタイ11:12 新改…

原文における微妙なニュアンスと聖書解釈 ルカ10:18

原文における動詞の時制に注意を向けると、聖書筆者の微妙なニュアンスを理解する助けになります。 ルカ10:18は、その微妙なニュアンスが聖書理解の重要な鍵となっています。 新共同訳 イエスは言われた。「わたしは、サタンが稲妻のように天から落ちるのを…

ロゴスの永遠性と文語訳の神技 ヨハネ1:1

最近、ひょんなことから「日本聖書神学校」のウエブを見る機会がありました。 その際、以下の説明文を読みました。 一つの例として、ヨハネによる福音書は、「初めに言があった」という有名な言葉で始まります。 「あった」という訳は、今の時点とは無関係…

御霊に「満たされた」「感じた」「捕らえられた」    どれが正しいの? 黙示録1:10

黙示録1:10と4:2は、各邦語訳によって訳語がバラバラです。 この記事では、その相違について考えます。 ●黙示録1:9~10 新共同訳 9 わたしは、あなたがたの兄弟であり、共にイエスと結ばれて、その苦難、支配、忍耐にあずかっているヨハネである。わたしは…

「低い所、つまり地上」それとも「地の低い所」エペソ4:9

新改訳・最新版のエペソ4:9を見たところ、次のように訳されていました。 新改訳2017・エペソ4:8~10 8 そのため、こう言われています。「彼はいと高き所に上ったとき、捕虜を連れて行き、人々に贈り物を与えられた。」 9 「上った」ということは、彼が低…

マタイ24章のエクレクトスと患難前携挙説

新改訳の最新版と従来版のマタイ24章を比較してみました。 新改訳2017・マタイ24:22、24、31 22 もしその日数が少なくされないなら、一人も救われないでしょう。しかし、選ばれた者たちのために、その日数は少なくされます。 24 偽キリストたち、偽預言…

「赦しました」それとも「赦します」? マタイ6:12

Kirishinの【聖書翻訳の最前線】新改訳2017 9「主の祈り」を読みました。 マタイ6:12の新たな訳文の話です。 新改訳 私たちの負いめをお赦しください。私たちも、私たちに負いめのある人たちを赦しました。 新改訳2017 私たちの負い目をお赦しください…

「霊において貧しい者たち」に関する考察 マタイ5:3

取り上げる順番が逆だろと言われそうですが、今更ながらマタイ5:3です。 聖書協会共同訳 心の貧しい人々は、幸いである。天の国はその人たちのものである。 直訳「霊において貧しい人々」 新改訳2017 心の貧しい者は幸いです。天の御国はその人たちのも…

ローマ12:1と1ペテロ2:2の訳語に関する考察

表題にある2つの聖句には、様々な訳文があります。 日本語としては、どれも意味が異なります。 どうしてこのような事が起こるのでしょうか? まずは、ローマ12:1から見てみましょう。 聖書協会共同訳 こういうわけで、きょうだいたち、神の憐れみによって…

ピスティス・クリストゥの解釈に関する考察

前回の投稿で、私はピスティス・クリストゥを「キリストへの信仰」と解することが可能であると述べました。 こうした解釈の仕方を客体的解釈(キリストを信仰の客体として解釈すること)と呼ぶことにします。 それに対して、私が挙げた根拠では不十分だとの…

聖書協会共同訳・ヨハネ11:33の別訳に関する考察

聖書協会共同訳のヨハネ11:33を見たところ、別訳の表現が斬新でした。 聖書協会共同訳・ヨハネ11:33 イエスは、彼女が泣き、一緒に来たユダヤ人たちも泣いているのを見て、憤りを覚え、心騒がせて、34言われた。 「憤りを覚え」の部分には注が付いており、…

女の髪=かぶり物? それとも、覆いの代わり?     新改訳2017vs聖書協会共同訳

1コリント11:15を新改訳2017と聖書協会共同訳で比較してみたところ、ほぼ真逆の意味に訳されていることがわかりました。 新改訳2017 女が長い髪をしていたら、それは彼女にとっては栄誉なのです。なぜなら、髪はかぶり物として女に与えられている…

パウロ書簡におけるストイケイオン その3

*一部に加筆・修正あり。 最後に取り上げる学説は、「宗教的原則説」です(英語:Religious Principles)。 ガラテヤ教会やコロサイ教会には、律法の誤用や哲学の影響、異邦人発祥の諸宗教の教えが入り込んでいました。 宗教的原則説によると、それらを総括…

パウロ書簡におけるストイケイオン その2

第2回目は、ストイケイオンが悪霊を指すとする説です。 新改訳2017は、まさにその立場に立って訳しているようです。 新改訳2017・ガラテヤ4:3、9 3同じように私たちも、子どもであったときには、この世のもろもろの霊の下に奴隷となっていました。…

パウロ書簡におけるストイケイオン その1

*一部加筆あり 新改訳2017は、コロサイ2:20~21を次のように訳しました。 新改訳2017 もしあなたがたがキリストとともに死んで、この世のもろもろの霊から離れたのなら、どうして、まだこの世に生きているかのように、「つかむな、味わうな、さわる…

「霊」と「御霊」 どちらが正しい訳語? ヨハネ4:24

今回はヨハネ4:24の訳文について書こうと思います。 邦語訳のこの箇所は、それぞれ以下のように訳されています。 新改訳2017 神は霊ですから、神を礼拝する人は、御霊と真理によって礼拝しなければなりません。 新改訳・第三版 神は霊ですから、神を礼…

誰の信仰なのか? へブル11:11

KiriShinの連載記事「聖書翻訳の最前線」新改訳12によると、新改訳聖書2017(最新版)のへブル11:11は次のように翻訳されました。 新改訳・最新版 アブラハムは、すでにその年を過ぎた身であり、サラ自身も不妊の女であったのに、信仰によって、子を…

「御心に適う人」とはどんな意味? ルカ2:14

クリスマスの説教で、この箇所がテキストになった教会は少なくないのではないでしょうか。 「御心に適う人」とは私たちクリスチャンのことですが、「御心に適う」というのはどのような意味でしょうか? 新共同訳・ルカ2:14 「いと高きところには栄光、神に…

「こうして」? それとも 「そこで」? ルカ1:38

ルカの福音書1章38節を読んで思ったことを書こうと思います。 ルカ1:38(NKJV) Then Mary said, “Behold the maidservant of the Lord! Let it be to me according to your word.” And the angel departed from her. 今朝は、この箇所を新欽定訳で読みまし…

マルコ4:38の真の意味

最近、ギリシャ語学者のビル・マウンス先生のブログ記事で目から鱗の学びがありました。 記事の中でマウンス先生は、マルコ4:38で使われているオウという否定語(~ない)の解説をされています。 マルコ4:38 ところがイエスだけは、とものほうで、枕をして…

イエスが行った7つのしるしとその意味 その4

6 盲人の癒し ヨハネ9:1~7 またイエスは道の途中で、生まれつきの盲人を見られた。 2 弟子たちは彼についてイエスに質問して言った。「先生。彼が盲目に生まれついたのは、だれが罪を犯したからですか。この人ですか。その両親ですか。」 3 イエスは答え…

イエスが行った7つのしるしとその意味 その3

5 水上歩行 ヨハネ6:16~21 夕方になって、弟子たちは湖畔に降りて行った。 そして、舟に乗り込み、カペナウムのほうへ湖を渡っていた。すでに暗くなっていたが、イエスはまだ彼らのところに来ておられなかった。 湖は吹きまくる強風に荒れ始めた。 こうし…

イエスが行った7つのしるしとその意味 その2

3 ベテスダの池での癒し ヨハネ5:1~9 その後、ユダヤ人の祭りがあって、イエスはエルサレムに上られた。 さて、エルサレムには、羊の門の近くに、ヘブル語でベテスダと呼ばれる池があって、五つの回廊がついていた。 その中に大ぜいの病人、盲人、足なえ…

イエスが行った7つのしるしとその意味 その1

1 カナの婚礼 ヨハネ2:1~11 それから三日目に、ガリラヤのカナで婚礼があって、そこにイエスの母がいた。 イエスも、また弟子たちも、その婚礼に招かれた。 ぶどう酒がなくなったとき、母がイエスに向かって「ぶどう酒がありません。」と言った。 すると…

「小犬」の意味とイエスの意図 マタイ15:26~27

ネット上を見てみると、マタイ15:26~27の意味が誤解されていることがわかります。 この記事では、この箇所の「小犬」の意味を理解した上で、イエスさまの意図を確認します。 ●悪い事例 まずは、間違った解釈を見てみましょう。 以下はその事例です。 「子…

ヨハネ8章における暗示

ヨハネ8章で、ヨハネは主イエスを誰だと言っているのでしょうか。 新改訳と新共同訳を比較しつつ確認します。 ●ヨハネ8:24 ヨハネ8:24 それでわたしは、あなたがたが自分の罪の中で死ぬと、あなたがたに言ったのです。もしあなたがたが、わたしのことを信…

ヨベルの年とイエスの関係

ルカの福音書の学びからです。 ルカ1:1-2・新共同訳 わたしたちの間で実現した事柄について、最初から目撃して御言葉のために働いた人々がわたしたちに伝えたとおりに、物語を書き連ねようと、多くの人々が既に手を着けています。 上の箇所で「実現した」*…

心のきよい者は幸いです

マタイ5:8 心のきよい者は幸いです。その人は神を見るからです。 「きよい」と訳されているのは、カサロスという言葉です。 ギリシャ語辞典の説明では、「罪の影響による穢れを受けていない」状態とあります。 「見る」はホラオーという言葉で、「見る、体…

あわれみ深い者は幸い

マタイ5:7 あわれみ深い者は幸いです。その人はあわれみを受けるからです。 「幸い」というのはマカリオスという言葉で、辞典の説明によると、 「神の好意を受けることができて、羨ましがられるような立場にあること」を意味します。 また、「あわれみを受け…