女の髪=かぶり物? それとも、覆いの代わり? 新改訳2017vs聖書協会共同訳
1コリント11:15を新改訳2017と聖書協会共同訳で比較してみたところ、ほぼ真逆の意味に訳されていることがわかりました。
新改訳2017
女が長い髪をしていたら、それは彼女にとっては栄誉なのです。なぜなら、髪はかぶり物として女に与えられているからです。
新改訳の訳文によると、「女性の髪=かぶり物」です。
しかし、聖書協会共同訳を見ると…
聖書協会共同訳
女は長い髪が誉れなのです。長い髪は、覆いの代わりに女に与えられているからです。
こちらの訳文では、「髪=覆いの代わり」、つまり「髪≠覆い」です。
そして、新共同訳に至っては、新改訳の完全な真逆です。
新共同訳・1コリ11:14-15
男は長い髪が恥であるのに対し、女は長い髪が誉れとなることを、自然そのものがあなたがたに教えていないでしょうか。長い髪は、かぶり物の代わりに女に与えられているのです。
この訳文によると、「髪=かぶり物の代わり」です。
つまり「髪≠かぶり物」で、新改訳2017の真逆の意味になっています。
いったい、どの訳文が正しいのでしょうか?
今回は、この問題を考えたいと思います。
●ギリシャ語の意味
原文では15節後半は、次のように書かれています。
ὅτι ἡ κόμη ἀντὶ περιβολαίου δέδοται αὐτῇ.
なぜなら 長い髪は 代わりに 被り物(覆い)の 与えられている 彼女に
ブルーとレッドで示したアンティとペリボライオンの意味は、それぞれ以下のとおりです。
アンティ
〔前置詞〕≪基本的意味≫ 向き合って、面して、向かって〔常に属格と共に〕.①~の代わりに、~に代わって、~の返しに、~の報いに、~と引き替えに;(中略)②~のために;(中略)③~だから、~の故に;
ペリボライオン
①被い、外套、ヘブ1:12.②被り物、Ⅰコリ11:15 (同P457)
ギリシャ語辞典に従って訳してみますと、以下のようになります。
1コリ11:15後半
なぜなら、長い髪はかぶり物の代わりに彼女に与えられているからです。
この結果を見る限り、新共同訳の訳文が最も正しいと思われます。
新改訳はアンティを「~として」と訳していますが、ギリシャ語辞典辞を見る限り、アンティにそのような意味はありません。
つまり、髪と被り物はあくまで別物だということです。
新改訳の「髪=かぶり物」という構図には、明らかに問題があります。
しかし、問題はこれだけではなく、他にもあります。
●更なる検証
更なる問題のヒントは、1コリ11:6にあります。
聖書協会共同訳・Ⅰコリ11:6
女がかぶり物を着けないなら、髪を切ってしまいなさい。女にとって髪を切ったり、そったりするのが恥ずかしいことなら、かぶり物を着けなさい。
新改訳2017・1コリ11:6
女は、かぶり物を着けないのなら、髪も切ってしまいなさい。髪を切り、頭を剃ることが女として恥ずかしいことなら、かぶり物を着けなさい。
上記の箇所をお読みいただくとわかりますが、かぶり物と髪が別物であることは火を見るより明らかです。
つまり、パウロは6節を書いた段階で、かぶり物と髪が異なるものであることを明示してるわけです。
それにもかかわらず、新改訳は敢えて「髪はかぶり物として」と訳すことで、「髪=かぶり物」という構図を創り出しています。
これはただの誤訳ですむことではなく、聖書の真理の歪曲です。
意図的な操作があると言われても仕方がありません。
おわり