「あわやナイフで刺されるか?」-フィリピン山岳伝道の証し-その1
何年も前のことだが、フィリピンの山岳伝道に行った。
ミンダナオ島という一番南の島の山岳地帯に、つい先日まで文化が入っていない、つまり、衣服を着ることすら知らず、結婚という概念すら持っていなかった部族が住んでおり、彼らに伝道する道が開かれた。
我々はまずマニラにある国際空港に降り立った。ミンダナオ島に行くには、国際線から国内線に乗り換え、小さな飛行機でさらに小1時間飛ばなければならない。そのためにタクシーを拾って移動するのだが、国際空港に集まってくるタクシーには2種類ある。一つは国営のタクシーで善良な運転手が正統な料金で乗せてくれる。もう一つは、フィリピンマフィアが運営するタクシーで、外国人には法外な料金を請求してくる。
我々は国営タクシーを捜すが、もともと台数が少ないためか、1台も見つけられない。仕方がないので、マフィアの運ちゃんと交渉する。国内線までの料金を尋ね、リーズナブルならそれで行こうということになった。
あるマフィア系の運ちゃんが、こちらが提示した金額で行ってくれるというので、そのタクシーと、近くにいたもう1台のマフィア系タクシーの2台に分乗して行くことに。ところが、走りながらメーターを見ていると、やっぱりおかしい。料金がどんどん上がっていき、交渉した金額をとっくに越えてしまった。
一行のリーダーである牧師が、もうこのタクシーは降りようと言うので、通訳である私は運ちゃんにその旨を伝えた。すると運ちゃんは、最寄りのガソリンスタンドへ。我々は車を降りて、トランクから自分たちの荷物を出し始めた。
(ここからは帰国後わかった事実)
すると、マフィアの運ちゃんが交渉係であった私の背後に回り、ポケットからナイフを出した。私は荷物を出しているので、まったく気付かない。運ちゃんはすぐ後ろに立ち、腰の脇に隠すようにしてナイフを構えている。いきなり刺すつもりなのか、それとも、とりあえず脅しをかけて金をふんだくるつもりなのか。
(ここからは、帰国後はじめて自分がナイフで狙われていたことを知ったときの、私の心の叫び)
「こら牧師! なんで今まで黙っとたんじゃ?牧師たるもの、己の羊が危険に晒されているのにただ突っ立って見とったんかい?牧師なら体はってでも、守らんかい。コラぁぁぁ!」
ちなみに、この牧師。教会では「忍者おか○」と呼ばれており、特徴は挙動不審。みんなが集まっているところを通るとき、壁伝いにこそこそと、誰とも視線を合わせずに壁のほうを向いて通ってゆくことからこのあだ名がついた。
どうも彼は、牧師でありながら、人と対面することが極めて苦手らしい。話すときにも、普通に言葉を出すことができず、詰まりながら、少しずつしか話せない。父親は外交官で、お金持ちのお坊ちゃまであった。実家では家族間の会話の中で英語が飛び交っているそうだが、なぜか教会の宣教旅行では、通訳者に話させる。しかしこの牧師、ひとたび祈り出すと何時間でもぶっ通しで、大声で祈り続けることができるという特技の持ち主であった。
(ここから際ほどの続き)
と、そこへ神の助け。なんと国営のタクシーが2台、給油のために空車でやって来た。さっきはあれほど探しても1台も見つけられなかったのに、私が刺されるかという危機にあって、なんと2台いっぺんに来るとは!(生ける神の絶妙な介入。見事としか言いようがない。)
それに気付くと、我々の顔は明るく輝いた。あたかも何事もなかったかのように、そちらのタクシーに乗り換え、無事、国内線に向かった。ナイフを出していたマフィアの運ちゃんは、国営タクシーが来たのを見ると、ナイフをしまい、何もせずに退散した。結果からすると、忍者おか○の判断は、まんざら間違っていなかったのかもしれない。
「幾度も旅をし・・・同国人から受ける難、異邦人から受ける難・・・に会い」競灰螢鵐硲隠院В横
つづく・・・
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ミンダナオ島という一番南の島の山岳地帯に、つい先日まで文化が入っていない、つまり、衣服を着ることすら知らず、結婚という概念すら持っていなかった部族が住んでおり、彼らに伝道する道が開かれた。
我々はまずマニラにある国際空港に降り立った。ミンダナオ島に行くには、国際線から国内線に乗り換え、小さな飛行機でさらに小1時間飛ばなければならない。そのためにタクシーを拾って移動するのだが、国際空港に集まってくるタクシーには2種類ある。一つは国営のタクシーで善良な運転手が正統な料金で乗せてくれる。もう一つは、フィリピンマフィアが運営するタクシーで、外国人には法外な料金を請求してくる。
我々は国営タクシーを捜すが、もともと台数が少ないためか、1台も見つけられない。仕方がないので、マフィアの運ちゃんと交渉する。国内線までの料金を尋ね、リーズナブルならそれで行こうということになった。
あるマフィア系の運ちゃんが、こちらが提示した金額で行ってくれるというので、そのタクシーと、近くにいたもう1台のマフィア系タクシーの2台に分乗して行くことに。ところが、走りながらメーターを見ていると、やっぱりおかしい。料金がどんどん上がっていき、交渉した金額をとっくに越えてしまった。
一行のリーダーである牧師が、もうこのタクシーは降りようと言うので、通訳である私は運ちゃんにその旨を伝えた。すると運ちゃんは、最寄りのガソリンスタンドへ。我々は車を降りて、トランクから自分たちの荷物を出し始めた。
(ここからは帰国後わかった事実)
すると、マフィアの運ちゃんが交渉係であった私の背後に回り、ポケットからナイフを出した。私は荷物を出しているので、まったく気付かない。運ちゃんはすぐ後ろに立ち、腰の脇に隠すようにしてナイフを構えている。いきなり刺すつもりなのか、それとも、とりあえず脅しをかけて金をふんだくるつもりなのか。
(ここからは、帰国後はじめて自分がナイフで狙われていたことを知ったときの、私の心の叫び)
「こら牧師! なんで今まで黙っとたんじゃ?牧師たるもの、己の羊が危険に晒されているのにただ突っ立って見とったんかい?牧師なら体はってでも、守らんかい。コラぁぁぁ!」
ちなみに、この牧師。教会では「忍者おか○」と呼ばれており、特徴は挙動不審。みんなが集まっているところを通るとき、壁伝いにこそこそと、誰とも視線を合わせずに壁のほうを向いて通ってゆくことからこのあだ名がついた。
どうも彼は、牧師でありながら、人と対面することが極めて苦手らしい。話すときにも、普通に言葉を出すことができず、詰まりながら、少しずつしか話せない。父親は外交官で、お金持ちのお坊ちゃまであった。実家では家族間の会話の中で英語が飛び交っているそうだが、なぜか教会の宣教旅行では、通訳者に話させる。しかしこの牧師、ひとたび祈り出すと何時間でもぶっ通しで、大声で祈り続けることができるという特技の持ち主であった。
(ここから際ほどの続き)
と、そこへ神の助け。なんと国営のタクシーが2台、給油のために空車でやって来た。さっきはあれほど探しても1台も見つけられなかったのに、私が刺されるかという危機にあって、なんと2台いっぺんに来るとは!(生ける神の絶妙な介入。見事としか言いようがない。)
それに気付くと、我々の顔は明るく輝いた。あたかも何事もなかったかのように、そちらのタクシーに乗り換え、無事、国内線に向かった。ナイフを出していたマフィアの運ちゃんは、国営タクシーが来たのを見ると、ナイフをしまい、何もせずに退散した。結果からすると、忍者おか○の判断は、まんざら間違っていなかったのかもしれない。
「幾度も旅をし・・・同国人から受ける難、異邦人から受ける難・・・に会い」競灰螢鵐硲隠院В横
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