その12 神の怒りの啓示とは?
「というのは、不義をもって真理をはばんでいる人々のあらゆる不敬虔と不正に対して、神の怒りが天から啓示されているからです。」ローマ1:18
「神の怒りが天から啓示されている」とありますが、これはどういう意味でしょう。
「啓示されている」の部分は、原典において現在形の動詞が使われています。
ですからここで述べらている神の怒りは、将来に啓示されるものではなく、今現在、継続的に啓示されているものです。
だからと言って、空に何かが啓示されていて、それを見たら誰でもわかるというものでもありません。
では神の怒りは、どのような方法で啓示されているのでしょうか。
●怒りを表した方法
24、26、28節を見ると、神が段階的に人を罪に引き渡すことによって、裁きを行ったことがわかります。
例えば28節・・・
「神は、彼らを良くない思いに引き渡され、そのために彼らは、してはならないことをするようになりました。」(正確には、「堕落した思い」)
この節の前半でパウロは、神が怒りをどうのように表したかを説明しています。
人間を霊的倫理的に更生させる代わりに、「良くない思いに引き渡した」とあります。
罪に引き渡し、更なる悪に進ませることは、神の裁きです。
そのような方法で、神は怒りを表しました。
●実例?
24,26,28節の「引き渡され」の部分には、原典ではアオリスト過去形の動詞が使われています。
つまり人類が汚れや情欲や堕落した思いに「引き渡された」のは、過去のある時点で一度だけ起きた歴史的な事実だということです。
そのような瞬間が、歴史上にあったということです。
たとえばノアの洪水のような出来事が、堕落した思いに引き渡すことによる裁きだったかもしれません。
創世記6:5を見ると、神がノアの洪水によって人類を裁いた理由が書かれています。
「主は、地上に人の悪が増大し、その心に計ることがみな、いつも悪であることだけに傾くのをご覧になった。」
この時点で、人間の全的堕落が浮き彫りになっています。
人の心が思いつくことは「みな」悪であり、「いつも」悪であるとモーセは述べています。
それゆえ神は、洪水によって人類を裁きました。
では、人間の性質は改善されたでしょうか。
創世記8章の終わりに、洪水直後の人間の状態が書かれています。
「わたしは、決して再び人のゆえに、この地をのろうことはすまい。人の心の思い計ることは、初めから悪であるからだ。」(8:24)
悲しいことに、人間の全的堕落はまったく改善されませんでした。
洪水の前にも人の心が計ることは悪でしたが、洪水の後でもその性質は同じだったのです。
神は、この状態のまま人間を生かし続けることに決めました。
つまり人間を悪に引き渡したのです。
●継続状態=啓示
このようにして、こんにちに至るまで人間は罪に引き渡された状態で生かされています。
悪い思いに引き渡すという裁きは過去に一度だけなされたことですが、それによってもたらされた結果は今も続いています。
このように、人類が継続的に罪に引き渡されている状態こそ、神の怒りの啓示なのです。
「なぜ神が存在するなら、この世に悪を放置しているのだ」と言って、人は神の存在を否定したり、神をののしります。
しかし皮肉なことに、神を認めていない状態こそが、神の怒りの啓示だということです。
啓示されているのに、それがわからない。
それほど人間は罪に支配され、霊的に無能になっているのです。
「神は、彼らに鈍い心と見えない目と聞こえない耳を与えられた。今日に至るまで。」ローマ11:8