クリス・ヴァロトンの夢 その1
クリス・ヴァロトンとビル・ジョンソンが共著した「王家の者として生きる」(の原書)を読んでみました。二人ともカリフォルニア州レディング市にあるメガチャーチ、ベテル教会の教役者です。クリスは預言者で、ベテル教会のナンバー・ツーです。
1章「貧民の悲しい性(さが)」の中でヴァロトンは、或る夜、夢を見ます。その中でイエスが箴言の聖句を読んでいます。目覚めた後も、イエスとの会話が続き、その中でイエスがモーセが王室で育てられた理由を説明しています。
(原書P17~P18より抜粋)
That night I went to bed, fell asleep, and had a dream. In the dream a voice kept repeating this Scripture, "Under three things the earth quakes,and under four, it cannot bear up: under a pauper when he becomes a king"(Prov. 30:21-22 a). At three in the morning I woke up, feeling groggy but experiencing a deep sense of grief. I sat up against my headboard and tried to gather my thoughts.
その夜、私は床について眠り、夢を見ました。夢の中で誰かの声が繰り返し次の聖句を読んでいました。「この地は三つのことによって震える。いや、四つのことによって耐えられない。奴隷(貧民)が王となり治めるときに」(箴言30:21~22前半)。夜中の3時に目が覚め、頭がぼーっとしていましたが、深い嘆きをはっきりと感じました。私はベッドのヘッドボードにもたれながら思いを集中させました。
Then I heard the Lord, who also seemed grieved, ask me, "Do you know why the earth cannot hold up under a pauper when he becomes a king?"
すると主の声が聞こえました。主も嘆いている様子でした。そして主は、「貧民が王になると、どうしてこの地が立ち行かないかわかりますか」と私に尋ねました。
"No," I said, "But I have a feeling that You're going to tell me."
「わかりません。でも、あなたが教えてくださる気がします」と私は答えました。
The Lord continued, "A pauper is born into insignificance. As he grows up he learns through life that he has no value and his opinions don't really matter. Therefore, when he becomes a king, he is important to the world around him but he still feels insignificant in the kingdom that lies within him. Subsequently, he doesn't watch his words or the way he carries himself. He ultimately destroys the very people he is called to lead. You,my son, are a pauper who has become a king."
主は言いました。「貧民はつまらない境遇に生まれつきます。成長するにつれて、自分には価値がなく、自分が何か言っても取り合ってもらえないことを学習します。ですからその人が王になった場合、周囲の世界にとって彼は重要であり、王権が自分の手中にあるにもかかわらず、自分はつまらない人間だと思い続けます。結果的にその人は、自分の発言や振る舞いに注意を払いません。そして最終的には、その人が統率している国民を滅ぼすことになるのです。わが子よ。王になった貧民とは、あなた自身のことです。」
Through the wee hours of the morning the Lord began to teach me about my identity as a prince. He took me to various Scriptures and showed me how important it is for His leaders to carry themselves as princes and princesses because we are sons and daughters of the King. The first example He showed me was Moses. He asked me, "Do you know why Moses had to be raised in Pharaoh's house?"
主は朝早くに、王家に生まれた者としての私の自己像について諭し始めました。主はいろいろな聖書箇所へと私を導き、主にある指導者として、王の王の子として生まれた自覚を持つことの重要性を教えてくださいました。最初に教えられたのは、モーセについてです。主が尋ねました。「モーセがパロの家で育つ必要があったのは、なぜだかわかりますか。」
"No," I said. 「わかりません。」
"Moses was born to lead the Israelites out of slavery. Moses had to be raised in Pharaoh's house so that he would learn how to be a prince and not have a slave's mentality. A leader who is in slavery internally cannot free those who are in slavery externally. The first 40 years of Moses' life were just as important as the 40 years he spent in the wilderness."
「モーセはイスラエル人を奴隷状態から解放するために生まれました。モーセがパロの家で育つ必要がったのは、自分が王家の者であることを学び取り、奴隷の精神を捨て去るためです。心が奴隷状態にある指導者は、実際に奴隷となっている人々を解放することができないからです。ですから最初の40年間は、荒野での40年間と同じように重要だったのです。」
When the Lord said this, it opened a door into Moses' experience for me. I began to imagine what it must have been like for him to be raised as a son of the king. He would have always known he was significant.
主からこのことを教えられたことにより、私もモーセと同じ体験をすることになりました。王の息子として育つということがどういうものなか、想像するようになったのです。モーセは自分が重要な人間であることを、常に意識していたはずです。
●検証
①箴言30:22の意味
あるオンライン聖書の注解は以下のように説明しています。
NETバイブル
A servant coming to power could become a tyrant if he is unaccustomed to the use of such power, or he might retain the attitude of a servant and be useless as a leader.
奴隷が権力の座についた場合、権力の行使に不慣れであるため専制君主になる可能性がある。あるいは奴隷の精神性を持ち続け、指導者としては役に立たないかもしれない。
夢の中のイエスの解釈
「貧民はつまらない境遇に生まれつきます。成長するにつれて、自分には価値がなく、自分が何か言っても取り合ってもらえないことを学習ます。ですからその人が王になった場合、周囲の世界にとって彼は重要であり、王権が自分の手中にあるにもかかわらず、自分はつまらない人間だと思い続けます。結果的にその人は、自分の発言や振る舞いに注意を払いません。そして最終的には、その人が統率している国民を滅ぼすことになるのです。」
①の評価
夢の中のイエスによる解釈は妥当だと言えます。
ただひとつ気になるのは、夢の中のイエスが、箴言の「奴隷」に当たる分部でpauper(貧民/生活保護受給者)という単語を使っていることです。私が調べた限りでは、英語聖書の「奴隷」に該当する部分には、servantか slaveしか使われていません。
②モーセに関する説明
「モーセはイスラエル人を奴隷状態から解放するために生まれました。モーセがパロの家で育つ必要がったのは、自分が王家の者であることを学び取り、奴隷の精神を捨て去るためです。心が奴隷状態にある指導者は、実際に奴隷となっている人々を解放することができないからです。ですから最初の40年間は、荒野での40年間と同じように重要だったのです。」
私はこちらについてはいくつか疑問点があります。
疑問点1
モーセがイスラエル人の解放に召されたのは確かですが、彼が「生まれた」のは、そのためだけではりません。私はこの部分で、これはイエスの説明ではなく、ヴァロトン自身の聖書理解がこれだけだったのではないかと疑います。
イ)創世記、出エジプト記
「創世記や出エジプト記の著者は、明らかにエジプトについてよく知っている者である。たとえば、エジプト人の名前に見られるように(創世記41:45等)、また、五書の中で使われている言語の中には、古代の言語が数多く見られる。そして、モーセの背景を考慮する時に、彼はこれらの要求を満たすのに最もふさわしい人物である。」
「新聖書辞典」(いのちのことば社)P1259より
創世記41:45
パロはヨセフにツァフェナテ・パネアハという名を与え、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナテを彼の妻にした。こうしてヨセフはエジプトの地に知れ渡った。
ロ)律法には、613もの戒めや規定があります。これを書き記すには、文書や法律の知識が必要です。
ハ)イスラエルの家を治める
モーセは民のもめ事を裁いていました。初期においては小さな問題から大きな問題まですべて、途中からは重大な問題を裁きました。日本でいえば、最高裁判所の裁判官です。これには、かなりの知性と教養が求められます。
モーセがエジプト最高の教育を受けたのは、このためだったのではないでしょうか?
疑問点2
ヴァロトンは、「心が奴隷状態にある指導者は、実際に奴隷となっている人々を解放することができないからです」と言っていますが、イスラエルを解放したのはモーセではありません。神(イエス)です。モーセは主が言われるままに発言し、行動しましたが、それらの発案は一切していません。新約聖書の光に照らすなら、モーセは、解放者であるイエスの雛型に過ぎませんでした。
つづく