ダビデの日記

自分が学んだ聖書の教えに関するブログ

クリス・ヴァロトンの夢 その2


 その1では、聖書の視点からいくつかの疑問点を指摘しました。しかしこの記事では、聖書とは逆の視点から疑問を呈します。ここまで来ると「戦に勝つには敵を知れ」とか「毒を以て毒を制す」の世界です。聖書以外に興味のない方は、ここから先は読む必要はありません。 
 
 
●夢を通してコミュニケーションする神?
 
 私はこの記事を準備する過程で、アメリカの牧師がヴァロトンの本を参考にして説教を書いているのを見つけました。彼に「あなたの説教に興味があります」とe-mailを送ったところ、マーク・ヴァークラーという人物を紹介してくれました。
 
 ヴァークラーは、「コミュニケーション・ウィズ・ゴッド・ミニストリーズ」を運営しています。聖書を研究するのではなく、夢という現象を研究して啓示を受けることを提唱している人物です。彼がキリスト教のTV番組に出ていたので、その動画を見てみました。すると彼は、夢を通して神から啓示を受け取る方法について語り始めました。 
 
コミュニケーション・ウィズ・ゴッド・ミニストリーhttp://www.cwgministries.org/
シド・ロスの「超自然の世界」https://www.youtube.com/watch?v=loBqkFyWEtk
 

動画からの抜粋
1045~あなたは自分で自分に「私は神が夢を通して私に語ることを信じます」と言い聞かせる必要があります。・・・夢はあなたの心に語るシグナルで、「あなたが私(あなたの心)を覚醒するなら、私(あなたの心)は覚醒します」と言います。言い換えると、あなたはペンとメモを枕もとに置いておき、あなたの心に言ってください。「夢を見せてください。あなた(自分の心)が私に見せてくれる夢を、私は書き取りますから」と。するとあなたの心は答えます。「オーケイ。私はあなたを覚醒してあげましょう。」・・・・
 
 
キリスト教の名による偶像崇拝

 ヴァークラーが言うように、夢は人間の深層心理のシグナルであって神ではありません。彼はそれを認めつつ、神ならぬものから啓示を受けることを勧めているのです。

 これは、もはやキリスト信仰ではありません。自分の深層心理に向かって祈り、自己開発、自己啓発をしろ、と言っているのであって、明らかに偶像崇拝の領域です。

 このような発想はニューエイジに酷似しています。
 
 
 
「この運動の目的を一言で言えば、自己自身の意識を高いレベルに変容させ、宇宙的意識に融合していくことです。」島薗進『新新宗教と宗教ブーム』)

「新霊性運動の形態はまことにさまざまだが、共通する考え方の特徴を一言で述べるとすれば、「自己変容の追求ということになる。

 新霊性運動は「自己変容」を追求すると述べたが、多くの場合、それは「意識変容」と結びつけられている。個々人が瞑想やその他の修行、技術を用いて日常の醒めた意識とは異なるレベルの意識や心のレベルに気づき、そこに接近していくことに高い価値を置くのである。

 異なるレベルの意識や心とは、本来的な自己であり、魂とよばれるものに通じている。それは自分が生まれる前の世界や死んだ後の世界とつながっている可能性がある。また、個人の心や身体を超えて、宇宙や自然の力とつながっているにちがいない。

 意識や心の変化を進めることは、環境との調和的関係を促進することである。それによって自己の運命が変わるだけでなく、さらには世界や宇宙の変容にも寄与していくことになる。このように個人の醒めた合理的意識を超えて新しい考え方、感じ方を広めていくことによって、近代文明のゆきづまりを超えていくことができ、人類の進化の新しい段階を切り開くことになる。」(島薗進「新霊性運動・ニューエイジ・精神世界」『新宗教時代 5』)
 
ニューエイジ運動(霊性復興運動)は、かつての世代が盲信してきた近代的合理主義や伝統的キリスト教への反発から、東洋思想や神秘主義などを積極的に採り入れ、内面世界を追求してゆく大衆運動が始まった。やがて宗教文化的な側面ばかりでなく、ニューサイエンス、エコロジー、潜在能力開発、自然医学、ヒーリングなど領域が拡大されてゆく。
 
論証を放棄し、知性よりも直観を、理論よりも感性を尊重することで、ニューエイジは異質な諸信念幅広く上手に取り込む」(レイチェル・ストーム『ニューエイジの歴史と現在』)
 
重要なのは体験であって、言葉ではない。メッセージは感覚を通してやってくる。知性を通してではない」(レイチェル・ストーム『ニューエイジの歴史と現在』)(強調はダビデ
 
 
*サウルの口寄せと同じ 
 
 聖書を信じる人は誰でも、神が夢を通して語る場合があるのを知っています。しかし聖書に書かれている夢は、神が主権的に選択した意志伝達方法であって、人間側が啓示を得る手段として意図的に求めたものではありません。人間が、神の意図する範囲を超えて霊的な世界を求めるとき、神とは別の霊的存在に接触することになるのは、目に見えています。
 
 夢を通して神の意志を得ようとする行為は、サウルが口寄せの女のところに行ったのと同じことです
 
 ヴァークラーが言うように、夢を通して霊的なメッセージを得ることはできるでしょう。しかし方法そのものが間違っており、偶像崇拝です。
 
 サウルの口寄せで現れたのは本当のサムエルだから、メッセージも本物だと思う方は、以下のウエブの後半を読んでください。口寄せのサムエルが悪霊であったことが、納得のいく説明で述べられています。
 
 
 
●まとめ
 
 ニューエイジの特徴や、夢を入り口とした異なる霊とのコンタクトなどを考えると、ヴァロトンが対話したイエスと思しき存在も、ニューエイジの霊ではないかと疑いたくなります。
 
 このようにヴァロトンの夢に疑わしい点があるのは明白ですが、現時点においては、あえてヴァロトンの夢が100偽物であるとは断定しません。
 
 この記事の狙いは、吟味の必要性を理解してもらうことにあるからです。真剣に吟味に取り組んでみれば、これだけの疑わしい点が出てくる、ということをわかってほしいのです。
 
 特に霊的な世界が大好きな方々には、神の主権を冒して霊的になろうとするとき、異なる霊と接触する結果になることを認識してほしい、またご自分が読んでいる書籍や証などを真剣に吟味してほしい、そう願います。
 
 それをしないなら、その人はサウルの二の舞を踏むことになるからです。
 
 子どもたちよ。偶像を警戒しなさい(第一ヨハネ521