ダビデの日記

自分が学んだ聖書の教えに関するブログ

ギリシャ語「エク」の解釈 黙示録3:10


 
 黙示録310は、患難前携挙説(以降、患難前説)の鍵となる箇所の一つです。
 
 患難前説を支持する方々は、おおむね次のように解釈します。
 
 
(2) ヨハネの黙示録3章10節
 「あなたが、わたしの忍耐について言ったことばを守ったから、わたしも、地上に住む者たちを試みるために、全世界に来ようとしている試練の時には、あなたを守ろう。」
 
この箇所での翻訳上の問題は、「全世界に来ようとしている試練の時には」の「時には」という訳です。
 
「全世界に来ようとしている試練」とは、反キリストによる未曾有の大患難のことです。新改訳ではその「試練の時には」と訳しています。
 
しかし原文では「~の時の中から」となっています。「時には」と訳されると、キリスト者もその試練の中にいることになります。
 
しかし「~の時の中から」と訳すなら、その試練の中にはキリスト者はいないことになります。
 
引用元:「牧師の書斎
 
 
 この記事では、この解釈が正しいかどうかを検証します。
 
 
ギリシャ語「エク」の解釈
 
黙示録3:10 
あなたが、わたしの忍耐について言ったことばを守ったから、わたしも、地上に住む者たちを試みるために、全世界に来ようとしている試練の時には、あなたを守ろう。
 
 
 上記の箇所で、「試練の時には」と訳されているのは、エクという言葉です。
 
 患難前説の説明では、「~の中から」と訳すべきだというのですが、
 
 ギリシャ語の専門書や辞典にはそう書かれていません。
 
 
 Basics of New Testament Syntaxダニエル・ウォレス著、P371)には、

 エクの意味(訳し方)についてこう書かれています。
 

Source(源泉に使われている場合の訳語): out of, from
 
Temporal時間に使われている場合の訳語):from, from...on 
 

 ウォレス博士の説明によると、エクが物事の源泉に関して使われている場合は、

「~の中から/out of」または「~から/from」と訳し、
 
 時間に関して使われている場合は、

「~から/from」または「~以降/from...on」と訳すべきだと説明されています。
 
 
 セイヤーギリシャ語辞典:エクにも、同じように書かれています。
 

IV. of Time (Winer's Grammar, 367 (344)); 
1. of the (temporal) point from which; Latinex,indea; from, from ... on, since:
 

特定の時点について使われている場合は、

「~から/from」か「~以降/from...on, since」という意味だと説明されています。
 

 この記事の冒頭で引用した患難前説の説明は、
 
「~の時の中から」(英語ではout ofと訳すべきだとしていますので、
 
 ギリシャ語の専門書や辞典の説明と食い違っています。
 

 
「守る」とエクの組み合わせ

 黙示録3:10の試練の時にはあなたを守ろう」という部分は、

 原文では次のようになっています。
 

 σε   τηρήσω  ἐκ  τῆς ὥρας  τοῦ πειρασμοῦ 
あなたを  守る ~から  時間    試練の     
 
 
 ヨハネ福音書17章に、

「~から守る」の部分と同じギリシャ語の組み合わせが使われている箇所があります。
 
 
ヨハネ17:15 
彼らをこの世から取り去ってくださるようにというのではなく、悪い者から守ってくださるようにお願いします。
 
 τηρήσῃς   αὐτοὺς   ἐκ   τοῦ πονηροῦ
守ってください 彼らを   ~から   悪い者
 
 
 二つの箇所で「守る」と訳されているのは、テレオーという言葉です。
 
 ですからどちらの場合も、「テレオー+エク」という組み合わせです。
 
 
 ヨハネ17章の「悪い者」というのは、サタンのことです。
 
 イエスさまは、

 クリスチャンを物理的にサタンから守ってくださいと祈っているわけではありません。
 
 サタンはこの世の神ですから、私たちがこの世で生きている限り、

 物理的にサタンから隔離されることはありません。
 
 霊的な意味で、守ってくださいと祈っているのです。
 
 わかり易く言うなら、「信仰がなくならないように」祈ったのです(ルカ22:32)
 
 ということは、

 黙示録の場合も、「試練の時」から霊的に守ると意味している可能性が高いのです。
 
 その場合、クリスチャンたちは、

 患難期の中を生きるけれども、信仰は守られるということになります。
 
 
あとがき
 
 患難前携挙説の根拠の一つである聖書箇所の解釈が間違っているのは事実です。
 
 従って、同説を鵜呑みにしないほうが良いと思います。

 終わり