ダビデの日記

自分が学んだ聖書の教えに関するブログ

ダビデが取った騎兵は1700人、それとも7000人?   2サムエル記8:4と1歴代誌18:4

 
聖書の現象」と言われている箇所について、いくつかの記事を書いていこうと思います。
 
「聖書の(諸)現象」というのは、キリスト教進歩主義やリベラルから「聖書の矛盾」として批判される箇所のことを言います。
 
「聖書の現象」は旧約にも新約にもありますが、今回は以下の箇所を見たいと思います。
 
 
騎兵の数は1700それとも7000?
 
2サムエル8:3~
ダビデは、ツォバの王レホブの子ハダデエゼルが、ユーフラテス川流域にその勢力を回復しようと出て来たとき、彼を打った。ダビデは、彼から騎兵千七百、歩兵二万を取った。ダビデは、その戦車全部の馬の足の筋を切った。ただし、戦車の馬百頭を残した。
 
1歴代誌18:3~
ダビデは、ツォバの王ハダデエゼルが、ユーフラテス川流域にその勢力を確保しようと出て来たとき、ハマテに出て、彼を打った。ダビデは、彼から戦車一千、騎兵七千、歩兵二万を取った。ダビデは、その戦車全部の馬の足の筋を切った。ただし、戦車の馬百頭を残した。
 
 
 ご覧のとおり、2サムエル記には、ダビデは1700人の騎兵を敵から奪ったと書かれており、1歴代誌には、7000人取ったと書かれています。
 
 この食い違いを、どのように解釈すればよいでしょうか?
 
 
解決案
 
 NIV(新国際訳)の2サムエル8:4を見ると、「戦車1000と騎兵7000人」と書かれています。
 
David captured a thousand of his chariots, seven thousand charioteers and twenty thousand foot soldiers. He hamstrung all but a hundred of the chariot horses. 
 
 
 この理由は、NIVがヘブル語テキストではなく、七十人訳を基にこの箇所を訳したからです。
 
 以下は、七十人訳の2サムエル記8:4です。
 
 
καὶ  προκατελάβετο  Δαυιδ   τῶν αὐτοῦ   χίλια   ἅρματα 
そして  まず取った  ダビデは   彼の    千の   戦車    
 
καὶ  ἑπτὰ  χιλιάδας  ἱππέων 
   7   千の     騎兵
 
καὶ εἴκοσι χιλιάδας  ἀνδρῶν πεζῶν
 と 20  千の   男たち 歩兵
 
 
 
 上記のとおり、七十人訳の2サムエル記8:4は1歴代誌から訳されています。このことから推測できるのは、
 
 七十人訳の翻訳者が、ヘブル語テキストの2サムエル記8:4は写本の誤りだと判断し、1歴代誌のテキストから訳したということです。
 
 パウロが2テモテ3:16で「聖書はすべて、神の霊感による」と言ったとき、「聖書」は七十人訳のことを指していたので、七十人訳を基に訳したNIVは賢明だと思います。  

 この考え方は、Defending Inerrancy(DI)という団体も提唱しています(注)。

 DIのサイトには、次のように説明されています。
 

解決案:これ(2サムエル記84)は、まごうことなく写本写筆者の誤りである。恐らく初期の写本写筆者が、「戦車」という語を不用意に写し損ねたのであろう。幾つかの翻訳聖書には、その語が補足されている。…正しい数を保存しているのは、恐らく1歴代誌の箇所のほうであろう。
 
引用元:Defending Inerrancy(聖書の無誤性を擁護するという意味)
 
注:
DIは、ノーマン・ガイスラー博士(南部福音主義神学校の共同創立者、同校学長)が編集主幹を務める保守的福音主義の団体です。ガイスラー博士は、「聖書の無誤性に関するシカゴ声明」(英語)の中心的編集者を務めました。
 

別の解決策
 
 Blessed Quietness Journalという欽定訳聖書を信奉するサイトでは、欽定訳に基づき別の解決策が示されています。
 
 しかし欽定訳の2サムエル記8:4は、日本語の聖書とは訳し方が違っており、次のように訳されています。
 
 
And David took from him a thousand chariots, and 700 horsemen, and 20,000 footmen
 
ダビデは、彼から戦車一千、騎兵七百、歩兵二万を取った。
 
 
 この訳の場合、「700の騎兵」は「700部隊の騎兵」(1部隊10人)という考えができるとしています。
 
 しかし繰り返しますが、日本語の聖書の場合(また、大半の英語聖書も)、この考え方は役に立ちません。
 
 
●あとがき
 
 今回の箇所の場合、七十人訳を知っていれば、すんなり解決できることがわかります。
 
 福音主義は、霊感を受けた聖書として七十人訳を認めておいたほうがいいのかもしれません。

 七十人訳聖書については、日本聖書協会のウェブに次のように書かれています。

新約聖書に引用されている旧約聖書の個所はこの70人訳からの引用であり…」



 

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