ノアの箱舟はギルガメシュ叙事詩をまねたもの?
ノアの方舟を字義どおり歴史的に起きたとするのは流石に無理があるでしょう。
1. 6章は2匹ずつ、7章は特定の動物を7匹ずつ、という違いがある。
2. 陸で別れていた動物がどうやって来たのか。当時大陸が一つだったいうのは後付けの妄想に過ぎない。
他にも疑問に思うところがありますかね?僕は完全に神話と見ています。
(引用終わり)
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創世記
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洪水の範囲
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地球規模
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地球規模
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原因
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人類の邪悪さ
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人類の罪
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対象
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全人類
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特定の都市と全人類
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行為者
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神々
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英雄の名称
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ノア
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ウトナピシュティム
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英雄の特徴
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義
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義
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宣告手段
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神の語り掛け
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夢
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船の建造命令の有無
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あり
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あり
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英雄は不平を言ったか
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なし
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あり
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船の高さ
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3階建
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7階建
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内部の部屋数
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多数
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多数
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出入り口
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1カ所
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1カ所
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窓の数
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最低1カ所
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最低1カ所
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外壁の防水加工
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タール(新改訳:やに)
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タール/やに
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箱舟の形状
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楕円形
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立方体
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人間の乗員
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ノアの家族のみ
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家族のほかにも数名
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その他の同乗者
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あらゆる種類の動物(脊椎動物)
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あらゆる種類の動物
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洪水の手段
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地下水と大雨
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大雨
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洪水の期間
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長期(40日40夜)
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短期(6日6夜)
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陸地の確認方法
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鳥を放つ
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鳥を放つ
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鳥の種類
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カラスと3羽の鳩
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鳩、ツバメ、カラス
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箱舟の到着地点
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アララテ山
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ニシル山
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洪水後の生贄
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ノアが奉献
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ウトナピシュティムが奉献
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洪水後の祝福
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あり
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あり
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●反論
日本人クリスチャンで、米国でギルガメシュ叙事詩を研究された「おさないのぞみ」さん(注1)によると、創世記の洪水説話はギルガメシュ叙事詩のそれを真似たものだとする批判は、アレクサンダー・ハイデル/Alexander Heidelの著作に基づくものです。
ハイデルはこう言っています。
“The most widely accepted explanation today is the second, namely, that the biblical account is based on Babylonian material.”(注2)
「こんにち、最も広く受け入れられている説明は、聖書の説話がバビロニアの資料に基づいているというものである。」
しかし、のぞみさんは、論文の第1章(英語)の中で、ギルガメシュ叙事詩の粘土板6には、「アトラ・ハーシス叙事詩」の粘土板3との共通要素や共通用語が多いため、ギルガメシュ叙事詩は「アトラ・ハーシス叙事詩」がもとになっているという見方が一般的だと述べています。
また、「ハイデルは、ギルガメシュ叙事詩の洪水伝説の英雄ウトナピシュティム(いのちの発見者/獲得者)という名前が、シュメール語の洪水伝説の英雄シウスドラ(遥か先の時代の命をつかんだ者)に由来する可能性が極めて高い」と述べています(Heidel, p. 227.)。
☆ ☆ ☆
注1
神学修士(東京聖書神学校、神戸ルーテル神学校)
注2
Alexander Heidel, The Gilgamesh Epic and Old Testament Parallels, University of Chicago Press, Chicago, 1949; paperback edition, p.261, 1963.
注3
Heidel, pp. 13–14. The Ḫumbaba episode (III–V) is also contained in tablet II. Frayne, pp. 104–143. Tablet XII contains the second half of the Sumerian epic poem, “Gilgamesh, Enkidu, and the Netherworld.” Moran, p. 2335.
●結論
のぞみさんは、一般的に議論となのるは次の3つだとしています。
③両者とも、共通のソースに基づいて書かれた
のぞみさんは、①を支持する学者はほとんどいないとした上で、②の仮説に進みます。
②の場合、創世記の著者は、多くの点を改訂しなければならないとのぞみさんは言います。
そのほんの一部として、多神論から絶対的単神論への改訂、雨だけによる洪水から地下水と雨への改訂、6日6夜から40日40夜へ、不安定な立方体の船から安定した楕円形の船に設計を変更…などなど、改訂事項は多岐に渡ります。
結論としてのぞみさんは、③を支持します。
一方、具体性、科学的信憑性、説話内部の一貫性、世俗の記録との整合性、世界中に見られる洪水伝説との共通性などの点で、創世記の洪水説話は、正確な歴史的記録として叙事詩よりも受け入れられるとしています。
そして最後に、モーセが資料として使用したもの一部は、こんにち存在しないものの、創世記の編纂過程には神の導きがあったはずだとのぞみはさんは述べ、
「ギルガメシュ叙事詩と創世記の相違を検証した後、筆者としては、ギルガメシュ叙事詩の洪水説話は、歴史的正確性が失われ、また歪曲されている一方、創世記の洪水説話は、歴史的に正確な記録であると結論づけることが合理的に思える」と結んでいます。
●あとがき
結論の選択肢②を支持するなら「如何にもクリスチャンらしい」ということになりますが、のぞみさんは研究者として③を支持しています。
この客観性は、信頼に値すると私は思いました。
おわり