ダビデの日記

自分が学んだ聖書の教えに関するブログ

ステパノは混乱していたのか? 使徒7:4

 
 今回は、有名なステパノの説教にまつわる「聖書の現象」(*)に関してです。
 
 ステパノは説教の中でアブラハムについて述べていますが、創世記の記述と照らし合わせると、アブラハムの年齢に食い違いが生じてしまいます。
 
 この記事では、この問題について考えます。
 
 
*「聖書の現象」とは、キリスト教進歩主義やリベラルが「聖書の矛盾」だと批判する聖書箇所を言います。
 
 
確認
 
使徒7:4 
そこで、アブラハムはカルデヤ人の地を出て、カランに住みました。そして、父の死後、神は彼をそこから今あなたがたの住んでいるこの地にお移しになりましたが、
 
 
 ステパノは上記の箇所で、アブラハムは「父の死後」にカランを出て、カナンの地に移ったと言っています。
 
 
創世記11:2632 
テラは七十年生きて、アブラムとナホルとハランを生んだ。
テラの一生は二百五年であった。テラはカランで死んだ。
 
 
 創世記11:32によると、アブラハムの父テラが死んだのは205歳のときです。
 
 そして、創世記11:26をもとに、テラが死んだときのアブラハムの年齢を計算すると、
 
 205‐70=135歳 です。
 
 ステパノが正しいなら、アブラハムがカランを出たのは135歳以降になります。
 
  
創世記12:4 
アブラムは主がお告げになったとおりに出かけた。ロトも彼といっしょに出かけた。アブラムがカランを出たときは、七十五歳であった。
 
 
しかし、創世記12:4には、「アブラムがカランを出たときは、七十五歳であった」と書かれています。
 
こういう問題は、どう考えればいいのでしょうか?
 
 
 
 これは私見ですが、当時のユダヤ人の理解では、アブラハムがカランを出たのは、「父の死後」だったのかもしれません。
 
 例えば、ヨハネ9章を見ると、弟子たちがキリストに尋ねます。
 
「先生。彼が盲目に生まれついたのは、だれが罪を犯したからですか。この人ですか。その両親ですか。」ヨハネ9:2
 
 この質問は、当時のユダヤ人の宗教的理解を反映しています。
 
 病気イコール罪の結果、という概念です。
 
 しかし主イエスは、どちらも否定しています(同3節)。
 
 つまり、当時のユダヤ人の宗教的理解がすべて正しかったわけではないということです。
 
 ですから、ステパノの理解に間違いがあっても、それをもって聖書に間違いがあると主張するのはお門違いです。
 
 確かにステパノは聖霊に満たされて説教していました(使徒610、同755)。
 
 しかしそれは、1ペテロ111や2テモテ316に書かれているような、聖典を書くための霊感が与えられていたこととは違います。
 
 ステパノの説教の目的は、ユダヤ人たちの不従順を叱責することでした(使徒751)。
 
 彼の説教は、主の預言者による預言でもなければ、使徒による教えでもありません。
 
 ステパノの説教は新約聖書の一部として掲載されましたが、それはヨブの友人たちの発言(個人的説教)が旧約聖書の一部として掲載されたのと同じことです。
 
 彼らの説教には間違いが含まれていますが、それでも聖典に掲載されました。
 
 彼らの説教に間違いが含まれていても、聖書に間違いがあることにならないのと同様に、 ステパノの説教に間違いがあっても、聖書に間違いがあることにはなりません。
 
 
他の解決案
 
創世記11:26
テラは七十年生きて、アブラムとナホルとハランを生んだ。  
 
 米国の聖書教師ジョン・マッカーサーは、「最善の解決案」として次のように述べていますThe MacArthur Bible Commentary, P1147
 
創世記1126には、「アブラハムが長子として書かれているが、実際はそうではなかったのだろう。アブラハムが傑出した息子だったので、長子として書かれたのだ。」
 
 しかし私は、この解決案には無理があり過ぎると思います。
 
 創世記の記事とステパノの説教の間にあるアブラハムの年齢差は、最低で60年もあります。
 
 また、アブラハムがテラの長子でなかったことを暗示する聖書箇所はありません。
 
 終わり