ダビデの日記

自分が学んだ聖書の教えに関するブログ

ユダヤ教における天国と地獄 by ラビ・オル・N・ローゼ その1

 
 ユダヤ教のラビによる、ユダヤ教における死後の世界観の変遷を扱った記事を読みました。
 
 新約聖書の天国・地獄観につながるものとして、興味深いのではないかと思います。
 
 何回かに分けて抄訳しようと思います。
 
 ソース:Heaven and Hell in Jewish Tradition by Rabbi OR N. ROSE
 
 
シェオール:地下の深い穴
 
 著者のラビ・ローズは、次のように述べています。
 
 聖書は概して、肉体の死が人生の終わりであることを示唆している。
 
 聖書の主な登場人物であるアブラハムモーセ、ミリアムについてもそうである。
 
 しかし、聖書の幾つかの箇所には、シェオール民数記3033)と呼ばれる場所の言及がある。
 
 シェオールとは「暗くて深い」場所であり、人間が死後にくだる「穴/the Pit」、また「忘却の地/the Land of Forgetfulness」として描かれている。
 
 シェオールという死者の世界では、死者は未知の状態で生き続けると言われている。
 
 ヨブは、善人であろうと悪人であろうと、金持ちであろうと貧乏人であろうと、奴隷であろうと自由人であろうと、みなシェオールにくだると言っている(ヨブ記31119)。
 
 
神殿の崩壊と来るべき時代
 
 来世思想の発展は、ユダヤ教の終末論の発展に伴っている。
 
 エルサレム第一神殿の崩壊(紀元前586年)ののちアモス、ホセア、イザヤなどの預言者が、よりよい未来の到来を予告しはじめる。
 
 しかし、度重なる軍事的敗北と捕囚、そして紀元70年の第二神殿の崩壊により、ユダヤ人思想家らは、早急な変化に対する希望を失いはじめる。
 
 その代わりに、メシア的未来と死後の世界に期待を寄せることとなった。
 
 これに伴い、朽ちる肉体と不滅の霊魂を分離するヘレニズム的概念が、ユダヤ教に取り込まれることとなる。
 
 紀元70年の惨劇は、神学的危機をもたらした。
 
 イスラエルの神は、ローマ帝国の手によって神殿が破壊され、主の民が征服されることをなぜお許しになったのか?
 
 往々にしてラビたちはイスラエルの罪深さが敗北を招いたと主張したものの、善良でまともなユダヤ人までもが苦しめられる理由の説明はつかなかった。
 
 これにより、新たな神学的見解が生まれることとなる。
 
 つづく