携挙論におけるユダヤ式婚姻説の問題点
患難前携挙説の信奉者が患難期を7年間とする根拠の一つは、聖書時代のユダヤの婚姻(結婚式)の慣習にあります。
この記事では、ユダヤ式婚姻説が7年間の患難期の根拠になるか否かを検証したいと思います。
●小羊の婚姻
患難前携挙説では7日間が7年間に置き換えられ、患難期は7年間だと説明されます。
ヨハネの黙示録19章7節のみことば、「私たちは喜び楽しみ、神をほめたたえよう。小羊の婚姻の時が来て、花嫁はその用意ができたのだから。」の「小羊の婚姻の時」とは、花婿なるキリストが花嫁である教会を迎えに来るその用意が整った時、つまり、天において花嫁を迎える新居の準備ができた時です。
(中略)
空中において結婚式がなされた後に、花婿と花嫁は天の住まい(新居)へと帰り、そこで七日間(七年間)のハネムーンをだれにも邪魔されずに過ごすのです。そしてこのハネムーンが終わる時、花婿と花嫁が地上に来て、ヨハネの黙示録19章9節にある「小羊の婚宴」がなされると考えられます。
(引用終わり)
上記の説明を整理すると、次のようになります。
①黙示録19章7節で携挙(結婚式)が起こる
③9節で再臨(婚宴)が起こる
しかし、この解釈は本当に正しいのでしょうか?
●黙示録の解釈
黙示録19:1~9
1 この後、私は、天に大群衆の大きい声のようなものが、こう言うのを聞いた。「ハレルヤ。救い、栄光、力は、われらの神のもの。
2 神のさばきは真実で、正しいからである。神は不品行によって地を汚した大淫婦をさばき、ご自分のしもべたちの血の報復を彼女にされたからである。」
3 彼らは再び言った。「ハレルヤ。彼女の煙は永遠に立ち上る。」
(中略)
6 また、私は大群衆の声、大水の音、激しい雷鳴のようなものが、こう言うのを聞いた。
「ハレルヤ。万物の支配者である、われらの神である主は王となられた。
7 私たちは喜び楽しみ、神をほめたたえよう。小羊の婚姻の時が来て、花嫁はその用意ができたのだから。
8 花嫁は、光り輝く、きよい麻布の衣を着ることを許された。その麻布とは、聖徒たちの正しい行ないである。」
9 御使いは私に「小羊の婚宴に招かれた者は幸いだ、と書きなさい。」と言い、また、「これは神の真実のことばです。」と言った。
黙示録19章を注意深く読むと、「牧師の書斎」の解釈に複数の矛盾点があることが分かってきます。
矛盾点その1
ディスペンセーション神学による黙示録の解釈は、時系列的です。
ですから「牧師の書斎」によると、7節は少なくとも再臨の7年前ということになります。
しかし、7節より前の19:1~3には「大淫婦」(大バビロン)の崩壊が描かれています。
ここで注意すべきことは、大バビロンの崩壊が再臨直前の出来事だということです。
それは、19:11が再臨の描写であることからわかります。
ですから、7節の小羊の婚姻が再臨の7年前に起こるという解釈は、時系列的に無茶苦茶です。
「牧師の書斎」のような解釈をした場合、大バビロンの崩壊と携挙の順番が逆転することになってしまうからです。
つまり、「牧師の書斎」の著者は、再臨直前の出来事の後に、患難期前に起こるはずの携挙が起こると述べていることになります。
これはむしろ、患難後携挙説を支持する解釈です。
矛盾点その2
7節で携挙が起こるという解釈には、もう一つ別の問題があります。
「牧師の書斎」によると、7節は世の終わりの7年前です。
その時点では、万物の更新はまだ起こりません。
万物の更新は、「主の日」に起こるからです(2ペテロ3:10)。
2ペテロ3:10
しかし、主の日は、盗人のようにやって来ます。その日には、天は大きな響きをたてて消えうせ、天の万象は焼けてくずれ去り、地と地のいろいろなわざは焼き尽くされます。
「主の日」とは、主イエスが地上に再臨する日です(ゼカリヤ14:1、4)。
ゼカリヤ14:1、4
1 見よ。主の日が来る。その日、あなたから分捕った物が、あなたの中で分けられる。
4 その日、主の足は、エルサレムの東に面するオリーブ山の上に立つ。
つまりペテロは、万物の更新は再臨の日に起こると言っており、それまで主イエスは天を離れないと言っているのです。
ですから、7節の段階で主が天を離れて空中まで来ることはあり得ません。
このようにユダヤ婚姻説には聖書の記述との食い違いが複数みられ、携挙や患難期に関する聖書的な説明とは言えません。
おわり