聖書協会共同訳の恥ずかしい誤訳 ローマ1:17
聖書協会共同訳のローマ1:17は、次のように訳されています。
聖書協会共同訳
神の義が、福音の内に、真実により信仰へと啓示されているからです。「正しい者は信仰によって生きる」と書いてあるとおりです。
(強調はブログ主)
通常、この箇所は次のように訳されます。
新改訳
なぜなら、福音のうちには神の義が啓示されていて、その義は、信仰に始まり信仰に進ませるからです。「義人は信仰によって生きる。」と書いてあるとおりです。
新改訳2017
福音には神の義が啓示されていて、信仰に始まり信仰に進ませるからです。「義人は信仰によって生きる」と書いてあるとおりです。
さて、前者と後者の違いは明白です。
前者は「真実」と「信仰」という別々の訳語が使われており、後者は「信仰」という同じ訳語が繰り返されているということです。
それでは、どちらの訳し方が正しいのでしょうか?
実はこの箇所には、ギリシャ語のイディオム「エク~エイス~」が使われています。
以下は、ローマ1:17の原文です。
δικαιοσύνη γὰρ θεοῦ ἐν αὐτῷ ἀποκαλύπτεται ἐκ πίστεως εἰς πίστιν, καθὼς γέγραπται, Ὁ δὲ δίκαιος ἐκ πίστεως ζήσεται.
「ἐκ~εἰς~」のエクとエイスの後ろには、それぞれピティス(信仰)が来ています。
この「エク~エイス~」というイディオムは、他の箇所でも使われています。
2コリント2:16
滅びる者には死から死に至らせる香りであり、救われる者には命から命に至らせる香りです。このような務めにだれがふさわしいでしょうか。
ἐκ θανάτου εἰς θάνατον, οἷς δὲ ὀσμὴ ἐκ ζωῆς εἰς ζωήν.
エク サナトウ エイス サナトン オイス デ オスメー エク ゾーエース エイス ゾーエーン
彼らは、力から力へと進み、シオンにおいて、神の御前に現われます。
πορεύσονται ἐκ δυνάμεως εἰς δύναμιν
ポレウソンタイ エク デュナメオス エイス デュナミン
エレミヤ9:2
彼らは舌を弓のように引き絞り/真実ではなく偽りをもってこの地にはびこる。彼らは悪から悪へと進み/わたしを知ろうとしない、と主は言われる。
七十人訳の「悪から悪へと」の部分には、やはりエク~エイスが使われています。
エク カコーン エイス カカ
このように「エク~エイス~」はイディオムであり、エクとエイスの後ろにはそれぞれ同じ言葉が繰り返されます。
当然のことながら、訳文にも同じ訳語を繰り返さなければなりません。
それを知ってか知らずか、聖書協会共同訳は「真実」と「信仰」という別々の訳語を入れいているのです。
このような恥ずかしい誤訳をしたのは、ピスティスを「真実」と訳したがる肉的なこだわりが原因ではないでしょうか。
賢明なる聖書学徒の皆さんは、二の舞を演じることのないようご注意ください。
ピスティスは、素直に「信仰」と訳しましょう。
おわり