ダビデの日記

自分が学んだ聖書の教えに関するブログ

ゴリアテを殺したのはダビデかエルハナンか? 1サムエル記17:51vs2サムエル記21:19



 
 キリスト教進歩主義者が、上の動画をツイッターに投稿していました。

 タイトルからも想像できますが、「聖書の現象」を含めて、一見すると矛盾しているかように思える聖書の教義や箇所を、コミカルに批判する内容になっています。

 投稿者が「聖書無誤も無謬もクソもない」とののしっているので、

「聖書の現象」という書庫を独立させて、記事を書き足していくことにしました。
 
 今回は以下の資料を参照して、2サムエル記21:19について書きます
 
 (グリーソン・アーチャー聖書難解事典)  

*英語でキリスト教書を読める方は、このPDFを開いてみてください。色々な「聖書の現象」について、解決案が提示されています。
 
 
ゴリアテを殺したのはダビデかエルハナンか?
 
 今回の「聖書の現象」は、新改訳や口語訳聖書を読んでいる方には無関係ですが、新共同訳の読者の場合、問題がおこります。
 

2サムエル記21:19 新改訳
ゴブでまたペリシテ人との戦いがあったとき、ベツレヘム人ヤイルの子エルハナンは、ガテ人ゴリヤテの兄弟ラフミを打ち殺した。ラフミの槍の柄は、機織りの巻き棒のようであった。
 
2サムエル記21:19・新共同訳
ゴブで、またペリシテ人との戦いがあったとき、ベツレヘム出身のヤアレ・オルギムの子エルハナンが、ガト人ゴリアトを打ち殺した。ゴリアトの槍の柄は機織りの巻き棒ほどもあった。
 
 
 1サムエル記17:23と51を見るとゴリアテを殺したのはダビデであることがわかります。
 
 ところが、新共同訳の2サムエル記21:19を見てください。
 
「エルハナンが、ガト人ゴリアトを打ち殺した」と書いてあります。
 
 この現象は、幾つかの英語聖書でも同様です。一例としてNIVを挙げます。

 
NIV
In another battle with the Philistines at Gob, Elhanan son of Jaare-Oregim the Bethlehemite killed Goliath the Gittite, who had a spear with a shaft like
 a weavers rod. 
 
 
 ゴリアテを殺したのはダビデでしょうか、それともエルハナンでしょうか?
 
 
解決案1
 
 最初の解決案は単純です。
 
 1歴代誌20:52サムエル記21:19の並行記事があり、こちらを見れば、エルハナンが殺したのはゴリアテの「兄弟ラフミ」であって、ゴリアテ自身でないことがわかります。
 
1歴代誌20:5・新共同訳
またペリシテ人との戦いがあったとき、ヤイルの子エルハナンは、ガテ人ゴリヤテの兄弟ラフミを打ち殺した。ラフミの槍の柄は、機織りの巻き棒のようであった。
 
 
解決案2
 
 このような現象が起こる理由について、アーチャーは次のように説明しています。
 
 
写本写筆者がこの聖句(2サムエル記21:19)を書き取った初期の写本は、文字がぼやけていたか、聖句の一部が破損していたに違いない。
 
そのせいで写本写筆者は、2、3のミスを犯したのだ。はっきりとわかる理由として、次のことが言える。
 
1.(ヘブル語テキストの)第一歴代誌の箇所を見ると、「ラフミ」の直前に「'-t」とある。写本写筆者はそれを、「ベス」という音を示す「b-t」または「b-y-t」と誤解したのだ。そこから「ベツレヘム人」と受け取った。 
 
2.さらに写本写筆者は、「ゴリアテ」の直前にある「'-h」を直接目的語を示す記号と勘違いした。実際は「兄弟」を意味する。
 
3.そして写本写筆者は、「機織り」に相当する言葉「'-r-g-ym」を「エルハナン」の直後に父方の祖先の名前として「ben Y-`-r-y'-r--g-ym」(ヤアレ・オルギムの子)と書いた。 
 「オルギム」は機織りを意味しており、1歴代誌の箇所では「巻き棒」の直後に来ている。このように考えると、完全につじつまが合う。 
 
                             (引用終わり)
 
●あとがき
 
 以下のリンクは、ヘブル語・英語のインターリニア聖書の1歴代誌20です。こちらを見ながら上記の説明を見ると、理解の助けになるかと思います。
 
 
 注意点として、ヘブル語は右から左に向かって書きます。よって「直前」は右側を意味し「直後」は左側を意味します。
 
 おわり