ダビデの日記

自分が学んだ聖書の教えに関するブログ

N.T.ライト/NPP

パウロにおける「栄光」の意味 ローマ3:23の再考

この記事は、新約聖書学者のシガールド・グリンドハイム博士の論文を記事にしたジャクソン・ウー氏のブログを参考にしたものです。 *** ローマ3:23・新共同訳 人は皆、罪を犯して神の栄光を受けられなくなっていますが… 皆さんは、この箇所の「栄光」とい…

ダマスカス文書に見る「パウロ研究の新しい視点」の矛盾

プレストン・スプリンクル著「パウロとユダヤ教への再訪問」(kindle版)を読んでみました。 そこで見つけたダマスカス文書に基づいて、NPPの矛盾点を指摘しようと思います。 日本福音主義神学会西部部会2012年度終期研究会議のレジュメである 「現代…

EPサンダースとジェイムズ・ダンに関する疑問

かの有名な、THE NEW PERSPECTIVE ON PAULという論文を読んでみました。 著者はジェイムズ・ダンといい、EPサンダースやNTライトと並ぶ、NPP御三家の一人です。 今や有名になった「パウロに関する新しい見方」(NPP)というフレーズは、この論文…

現代ギリシャ語新約聖書から証明されるNTライトの誤り

この記事は、NTライトの主張に対する粗探しのようなものかもしれません。 しかし、彼の言うことを盲目的に信じるよりは、ここに書かれたことを思いに留めておくほうが良いと思います。 ●ピスティス・イエソウ・クリストウに関する理解 私の手元にライトが…

「キリストを信じる信仰」か「キリストの忠実さ」か?  その3

その2では、複数の根拠を更に挙げて、「キリストを信じる信仰」という解釈が正しいことを述べました。 この記事でも、さらに根拠を挙げて「キリストを信じる信仰」という解釈が妥当であることを説明します。 その前に、前回、最後に説明したピリピの箇所は…

「キリストを信じる信仰」か「キリストの忠実さ」か?  その2

その1では、パウロがピステオス+クリストウというギリシャ語表現を使う場合、 「キリストの忠実さ」ではなく、信者の信仰という意味で使っていることを述べました。 そのことを示す聖書箇所も多数挙げました。 この記事では、ピステオス+クリストウを、「…

「キリストを信じる信仰」か「キリストの忠実さ」か?  その1

米国の福音派でしばらく前から物議を醸しているテーマの一つに、パウロ書簡に見られるfaith/faithfulness in Christというフレーズの翻訳/解釈の問題があります。 このフレーズは、ローマ3章とガラテヤ2章を中心にして、パウロの書簡の数カ所で使われて…

パウロが真に云わんとしたこと その7(NPP検証論考)

その6でガザーコール博士は、義と信仰について解説しました。 義とは、「律法のすべての命令を全うした者として神の前で認められる」ことであり、 信仰は、神の「語り掛けに対する応答として主に信頼する」ことです。 この記事では、「律法の行い」につい…

パウロが真に云わんとしたこと その6(NPP検証論考)

その5の後半から、ガザーコール博士は、聖書本文に基づいて義認について語りはじめました。 1世紀のユダヤ人の律法理解には、様々なバリエーションがありましたが、NPPの義認論は、その中の一部に基づいたものに過ぎません。 それゆえNPPは、パウロが言う…

パウロが真に云わんとしたこと その5(NPP検証論考)

その4では、ガザーコール博士が古代ユダヤ教の資料を提示して、1世紀のユダヤ人が行いによる救いを信じていたことを示し、NPPの欠陥を指摘しました。 資料には、「義を行う者は…自分のためにいのちを蓄える」「自分の行いによって救われた者たち」といった…

パウロが真に云わんとしたこと その4(NPP検証論考)

その3から、ガザーコール博士によるNPPの検証がはじまりました。 第二神殿時代のユダヤ人の律法理解には、大きな意味があること、それゆえ私たちは、ユダヤ教を偏見視してはならないこと、などが語られました。 しかしこの記事では、ついにガザーコール博…

パウロが真に云わんとしたこと その3(NPP検証論考)

ガラテヤ2:14~16 しかし、彼らが福音の真理についてまっすぐに歩んでいないのを見て、私はみなの面前でケパにこう言いました。「あなたは、自分がユダヤ人でありながらユダヤ人のようには生活せず、異邦人のように生活していたのに、どうして異邦人に対し…

パウロが真に云わんとしたこと その2(NPP検証論考)

NPPの礎を築いた学者の一人に、EPサンダース(E. P. Sanders)がいます。 サンダースは第二神殿期のユダヤ教を研究した結果として、「契約に基づく律法遵守説1/covenantal nomism」を提唱します。 「契約に基づく律法遵守説」とは、1世紀のユダヤ人は律法…

パウロが真に云わんとしたこと その1(NPP検証論考)

NTライトの著書「Justification - God's Plan & Paul's Vision」を読んでわかったのですが、 ライトが「義」という概念を「契約加入権/covenant membership」と解釈するようになった背景には、第二神殿期のユダヤ教の理解があります。 ライトは、第二神殿期…

NTライトのNPPに対する単純な疑問(短編)

前回のおまけのような、短編の記事です。 NTライトの主張に問題のあることが容易にわかる、とてもシンプルな内容です。 ●問題点 前回の記事にも書きましたが、 「Justification: God's Plan and Paul's Vision」(義認:神の計画とパウロのビジョン)のP1…

NTライトの義認理解

NTライトの「Justification: God's Plan and Paul's Vision」(義認:神の計画とパウロのビジョン)の序文を読んでみました。 ニコラス・トーマス・ライトは、パウロ神学の新しい見解で物議を醸しており、日本でも有名になっています。 この記事では、ライ…

イエスの復活は”万物の回復”の保証

キングダム・ニューテスタメントで使徒4章を読みました。2節に関して、ライトが普通と違う訳し方をしてたので気になりました。 ・・・they were teaching the people and proclaiming that “the resurrection of the dead” had begun to happen in Jesus. 弟子たちが民…

キングダム・ニューテスタメント 使徒2:42「交わり」というよりは「共同生活」

キングダム・ニューテスタメントで使徒2章を読みました。42節の表現が多くの英語聖書とは違っていたので、調べてみました。 新改訳では、 「彼らは使徒たちの教えを堅く守り、交わりをし、パンを裂き、祈りをしていた。」 となっていますが、ライトは次のように訳してい…

キングダム・ニューテスタメント マルコ9章「つまずきとなる」とは?

42節以降に「つまずく」という表現が4回出てきます。ライトはこれを”slip up”というイディオムで表現しています。 ”slip up”は、「つまずく」「(正道を)踏み外す」という意味です。 では、原語にはどのような意味があるのでしょうか? 「つまずきを与え…

キングダム・ニューテスタメント 使徒1章は「ふぅ~ん、そうなのか」

N.T.ライト著「キングダム・ニューテスタメント」で使徒の働き1章を読んでみました。 1.11節 「同じ方法で戻ってくる」 11節のイエスの再臨の仕方について、日本語の聖書のほとんどは、 「同じ有様で」という表現を使っています。 国語辞典で調べると、…

キングダム・ニューテスタメント マルコ5章は「わからないで賞」

ライトの新約聖書でマルコ5章を読んでいったところ、 7節に意味不明の表現が・・・ “Why you and me, Jesus?” he shouted at the top of his voice. “Why you and me, son of the High God?・・・ 「Why you and me?」 この表現の意味が不明です。 「なぜ…

キングダム・ニューテスタメント マルコ4:11~12

ライトはこの箇所をわかり易く訳しているので、新改訳と比較したいと思います。 新改訳: 「あなたがたには、神の国の奥義が知らされているが、ほかの人たちには、すべてがたとえで言われるのです。それは、『彼らは確かに見るには見るがわからず、聞くには…

キングダム・ニューテスタメント エペソ書は残念賞

昨夜はN.T.ライトのキングダム・ニューテスタメントで、エペソ書を読んでみました。 驚いたことに、1章~4章まで、普通の聖書で「キリスト」と書かれているところが、すべて「Kingまたはthe king」に置き換えられていました。 つまり、普通の聖書で「イエス…

キングダム・ニューテスタメント マタイ28章

今日はライトの新約聖書でマタイ28章を読みました。気づいたことを書きます。 1.28:17「疑った」 17 そして、イエスにお会いしたとき、彼らは礼拝した。しかし、ある者は疑った。 ライトの訳では「ためらった/hesitated」となっていました。 原語のディ…

N.T.ライトの救済観 「神は世界を丸ごと回復する」

以下はN.T.ライトの著書「神は如何にして王となったか:忘れられた福音書の物語」の抜粋です。なぜ多くの人がライトに興味を持つのかを、少しだけ垣間見てみましょう。 ●N.T.ライト著「How God Became King: The Forgotten Story of the Gospels」(P44~P45…

N.T.ライトの面白みと欠点 新約聖書編

今朝、ライトが私訳した”The Kingdom New Testament"をつまみ読みしてみました。面白いと思ったところと、良くないと思ったところを書きたいと思います。 ●良い点 ①「神の新しい時代のいのち」/the life of God's new age 通常、ゾエー・アイオニオスは「…

N. T. ライトの大嘘 その2

その1では、ライトが神と人との個人的な関係、つまり信仰による義認を否定していることを述べました。この記事ではもう一つの問題点である、神の国の考え方(終末論)を検証します。 2)神の国論(終末論)の間違い ライトの2つ目の間違いは、「イエスは…

N. T. ライトの大嘘 その1

N.T.ライトは、イギリスの聖書学者です。パウロの神学に(偽りの)新しい光を当てているとして世界的に注目され、昨今、日本でも彼の著書の翻訳が進んでいます。 ライトの言葉が先日クリスチャン・トゥデイに掲載されましたが、その中にはとんでもない嘘が含…